いただいた胡蝶蘭をより長く鑑賞する5つの方法
2022年06月15日
開業祝い、当選祝い、栄転祝い…さまざまなお祝いの場面で贈られる胡蝶蘭。でも、いただいた後に皆さんはどのようにお手入れをしていますか?さらにはどんな場所に置いているでしょうか? 花もちが良いと言われ、2~3か月は眺められる胡蝶蘭も、ちょっとした管理一つで、翌朝ダメになってしまうことも……。
そこでここでは、胡蝶蘭栽培歴39年以上の黒臼洋蘭園が、いただいたあと長く楽しめる、5つのお手入れのポイントをお伝えします。
とにかく置き場所に注意
お祝い花と言えば胡蝶蘭。そんな胡蝶蘭を贈られた人たちは、「おめでとう」の気持ちをお花に込めて贈られています。もしかしたら、贈った相手も見に来るかもしれません。開店祝いならなおさら、来店されるお客様にも幸せのおすそ分けをしたいものです。
そうした場合、胡蝶蘭は、大体「受付」や「エントランス」さらには、お店の「外」など一番目立つ場所に置かれがちですよね。ただ、胡蝶蘭を長く持たせたい場合は、あまり好ましくない環境の場合も・・・
胡蝶蘭の生育に必要なのは「光」と「風」と「水」。そこでまず何より、光が入らない、暗い場所は好みません。やはり少し日差しが降り注ぐ「窓際」に置き場所を確保したいものです。ただ、直射日光だと葉が焼けてしまうので、レースのカーテンの下あたりが良いでしょう。
開店のときはとりあえず目立つ場所に置き、しばらく落ち着いたら窓際に飾る方法をとったほうがほうがいいかもしれません。より花が楽しめるでしょう。
温度管理– 人間が快適に過ごせる温度なら胡蝶蘭も大丈夫
先ほど中ではなく外に出してしまうケースもご紹介しました。ただ胡蝶蘭にとって、夏は暑すぎるのでダメ、冬も寒すぎるのでダメ。温度にも気を付けてあげてください。夜に届いて外に置いておいたら、翌朝しおれてしまったという話もお聞きします。
胡蝶蘭の原産は東南アジア。ですので、もともとある程度温かさには強いのですが、やはり近年の日本の夏の昼間は胡蝶蘭にとっても耐え切れないようです。もし一度外に置いたとしても、その後は中に入れてあげてください。
また、夏、直接冷房が当たったり、冬は暖房の風が当たったりするような場所も要注意。
クーラーの下で、もろに風が当たっているような胡蝶蘭はあっという間に枯れてしまうのです。
これらを通じてわかることは、高貴なイメージのある胡蝶蘭も、我々と同じ生き物であるということです。さらに言えることは、人間が快適に思える環境であれば胡蝶蘭も長持ちするということ。人間も、直射日光が当たる場所は避けたいですし、クーラーの真下はイヤなもの。外のアスファルトの照り返しや、冬の寒い路上も苦手です。ですので、胡蝶蘭にとって一番良い置き場所を考えるときは、ご自身に置き換え、「自分がずっとここにいろって言われたらイヤだな」と思う場所は回避すると良いかもしれません。
過度の水やりは逆効果– 1週間~10日に1度でいいんです
胡蝶蘭の手入れの際、逆にあまり心配しなくても良いことがあります。それが「水やり」。ここまで繊細なケアが求められる一面をご紹介してきましたが、「水やり」に関しては意外と気をかけなくてもいいのです。一般的に奨励されている水やりの頻度は1週間に1度から10日程度と言われています。
胡蝶蘭の生育に際し、原産の東南アジアで見られる風景は、いろいろな木から生えているというもの。胡蝶蘭はもともと、木に着生(ちゃくせい)して花を咲かせる植物なのです。そこで水も、湿った木の皮や、空気中の水分から得ています。つまり胡蝶蘭にとっては、たまに湿っているぐらいがちょうど良い環境で、常に濡れているとかえって元気がなくなってしまうのです。
実は当園では、出荷する前に胡蝶蘭に水をあげています。つまり、贈られた方が水やりをするのは、届いた1週間~10日後で良いということになります。コップ1杯の水を1株ずつにかけてあげるのが良いでしょう。
ただ気をつけなければならないのが、鉢全体にラッピングがしてあるもの。鉢底には水抜け穴があるのですが、ラッピングには抜ける穴がないため、そのままの状態で水をあげていくと、下にどんどんたまっていってしまうのです。そこで、できれば届いたらラッピング用紙を取っていただくか、ラッピング用紙の一番下を十字に切って、水が抜けるようにしていただくのが良いでしょう。この際、受け皿を置くこともお忘れなく。
肥料は花が咲いているときは不要– サプリメント的な役割です
我々のもとには「胡蝶蘭をもらったあと、肥料はどうしたらいいの?」といったお問い合わせも多くいただきます。ただ実は肥料は、基本的には花が咲いているときには不要なのです。ではどうして肥料があるのでしょう? そう聞かれたとき、大体我々はこう答えています。「人間でいったらサプリメントです」と。上記述べてきた、光、水、温度、風といった最低限のお手入れをしておけば、肥料を与えなくても大丈夫。
ではいつ、肥料が必要になるのか。その前にお伝えしたいのが、胡蝶蘭はもらったあと、何度も花を咲かせることができるというもの。そう、一度きりではないんです。それを踏まえたうえでご説明したいのが、花が散って苗だけになったとき、再び体力を取り戻してあげるときに肥料をあげると良いのです。
蘭用の肥料はホームセンターや園芸店に売っています。パッケージの記載通りにやっていただければ十分でしょう。
2度咲きの極意– ギフトだった胡蝶蘭を、いつまでも咲かせるために
先ほどちらっと、胡蝶蘭は何度も咲かせることができるとお伝えいたしました。つまり、2度咲き、3度咲き、さらには四度咲きも夢ではないのです。胡蝶蘭を、もらった後もずっと、その空間を彩り、楽しむことができるというわけです。
ではまず「二度咲き」の方法を簡単にご説明いたします。一番最後まで咲ききらせると、上から花びらが徐々に散って落ちていきます。二度咲きの準備をするためには、すべての花びらが散ってしまったあとでも構いませんが、それぞれの株に1輪、2輪花びらが残っている状態でも始めることができます。
胡蝶蘭の茎には、人の指の関節のように、「節」というものが数センチごとに存在しています。これを下から4つめくらいの節を残して上を切り落としておくと、その節からまた新しい芽がもう一度出て来るのです。そこから花を再び咲かせることを「2度咲き」というのです。
ただ一度咲かせていることもあり、株自体はやはり多少疲れています。そのときに肥料を与えて再び元気にしてあげるのです。2度咲きするまで半年以上前にかかりますが、その後も株さえ元気であれば何回でも咲くことができます。
もちろんお手入れも先に述べた通りに続けていただければと思いますが、いずれにしても手をかけた分だけ、再び咲いたときの喜びはひとしおでしょう。
さらに、ギフトとしていただいた胡蝶蘭を、その後も咲かせ続けることができれば、贈り主にとってもこんなにうれしいことはありません。
昇進、開店、当選……。また新たな自分に生まれ変わるときにいただく、もう1つの“誕生花”ともいえる胡蝶蘭。そんなプレゼントを、その後もずっと育ててみてはいかがでしょうか。そうすれば、ふと迷ったり悩んだときでも、その胡蝶蘭を見れば、贈られたときの自分に立ち返り、初心に戻れることでしょう。胡蝶蘭は、人生の輝いた一瞬だけではなく、あなたの人生に寄り添うことができる花なのです。